沖田迷探偵によるSlapstick
お茶会には愉しいお茶請けを用意して?
序章 A
誰かが言った。
この世に偶然など存在しないのだと。
この世界には必然しか、ない。
ーーーーーーーーーすなわち、すべての出逢いは必然なのだと。
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都会の片隅にたしかに佇むOKI探偵事務所。
優秀な探偵(?)な沖田と苦労症の助手、斎藤が経営する知る人ぞ知る探偵事務所である。
いつもは主に沖田の健やかな寝息と斎藤の心からの辛苦から生まれるため息と斎藤の悲しげな咆哮じみた怒号
が聞こえるこの部屋に。
今日は珍しく、依頼人という名のお客が来たようである。
すずやかな音をたてて、『彼女』の前にティーカップが置かれた。
斎藤は手馴れた動作でテーブルにカップを並べる。
そのカップを彼女・・・今日来た客・・・はじっと凝視している。
華奢な肩には艶やかな黒髪が零れ落ち、うつむいているせいで髪が顔を隠してしまう。
緊張して無理もない、と斎藤はおもった。
普段、探偵事務所などなかなか、入る機会が無い筈だ。
「では、はじめまして。ようこそ・・・とでもいっておく? 僕は探偵の沖田総司と言います」
どこか、偽善者を思わせる胡散臭い笑みをうかべる沖田。
ついでとばかりに名前のメールアドレスしか記されていない名刺をすっと差し出す。
「あ・・・」
彼女が顔をあげた。
白く、陶器のような肌に斎藤は内心で眉をひそめる。
あまりにも、青白い。
長い睫毛が落とす影を相まって、だ。
医師の立場としてはなんらかの心痛を抱えてるのであれば取り除かなければいけないだろう。
「えと、始めまして、私は・・・」
「うん、さんだよね? 早速、話をきかせてもらおうかな」
そう、いうと沖田はほほえんだ。
一方、彼女は口を半開きにしている。
「どうして、私の名前」
「そこに書いてあったから」
沖田の指差す方向にはのもっている旅行かばんのキーホルダーがあった。
はうんうん、とうなずく。
そうすると、何処かあどけないような表情となり、彼女に年相応の印象を持たせた。
「はい、私の名はといいます。えと、そちらのかたは・・・?」
斎藤の方に向かれ、斎藤が口を開こうとしたとき。
「彼は僕の親友で僕の助手とどうしてもなりたがってなんとか、仕事をしている斎藤一くん」
限りなく、否定したい発言だが。
常識人の斎藤としては初対面の人間の前で沖田を張り倒すのは些か、気がひける。
普通だったら、間違いなく反撃にでるのだが。
沖田もそれを判っているのだろう。
かなり、必死に笑いをこらえているようだった。
それを強靭な精神力で無視してから、斎藤は軽く会釈した。
「よろしくおねがいします・・・。
あの、探偵の方は人探しの依頼をうけてくださるんですよね?」
沖田がいうよりはやく、勿論です、と斎藤は答える。
人探しなどと地道な仕事を沖田が嫌がるのは判っているが、こちらだって
いろいろ、恨み辛みはたまっているのだ。
沖田のねちっこい視線にもまけず、斎藤は続きを促した。
「あの、お願いです。
私の父を探し出してほしいんです!!」
この事件が彼らにとって忘れられないものになることを。
彼らはまだ、予期していなかった。
to be continued,,,,,,,