今宵の犠牲はあの娘くらいの者だったーーーーーー・・・。



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長い夜がもうすげ、終わりを告げる。
やっと、空が白み始めわずかな光が差してきた。
それをさけるように山南敬助は自室への道を急いでいた。
たぶん、幹部のなかで自分の行ってきた行動を気づいたものはいないだろう。
(土方君も藤堂君も・・・・)
まだまだ、あの二人は子供だということだ。
そう思うと、自然ににやりと口が三日月に歪んだ。
そして、それにつられるように流れ出たのは一滴の紅い鮮血・・・−−−−−。




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山南が夜中、屯所を抜け出し、することはただ一つ。
「食事」である。
人間を殺して、流れ出る血を啜り、ばれぬ様に辻斬りと見せかける。
血を食み始めた最初のころはためらいが多かった。
しかし、今はそうでもない。
むしろ、当然のことのようにも思えてくる。
人間であろうとなんであろうと。
この世に生きしもの全ては。他の生き物を殺して食べ、生きていくのだ。
羅刹はその対象が人間に変わっただけのこと。
ただ、それだけのこと。

何ゆえ、この考えが理解されないのか分からなかった。

自分は本能のまま、血を啜るのは正当なこと。
そう、山南は思っている。



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部屋に戻り、返り血の付いた服を脱ぎ捨てる。
鮮やかな浅葱色が目に痛かった。
昔はこの浅葱の元みな、一つだったのに。
何ゆえ、違ってしまったのだろう・・・・・・?

そんな自嘲がわずかばかり、頭をかすめる。

しかし、そんなことを考えても詮無いこと。
そう、思い思考を切り捨てる。

殺風景な部屋を見渡せば、文机の上にみなれないものがあった。
ーーーいつぞや、洗濯にだした服と綺麗に折りたたまれた紙切れ。

彼女、だ。

かさり、と紙を広げれば自分を気遣う言葉が並んでいた。

なぜだ、とおもう。
自分とは関わりたくないはずなのに。

何故、自分に笑顔を向けてくれるのか、
いくら考えても分からない。


(何故、彼方はわたしに歩み寄ろうとするのですかッッッ?!?!?!)

その声無き叫びはとどくことは無い。

彼女と自分は違うのに。
どうせ、彼女には別の人間がいるのに。


ふすまのすきまから、差し込むいやな朝日は。

酷く、彼女と似ていた。









優れし者が 解せぬ


  

羅刹は最も優れし者のはずなのに








自分が抱いている感情は分からない。
わかることは、きっとーーーーーーー無い。



                


                           END.

2010/06/011 up......