黒鴉からの頂き物

真紅の狂桜




君は、いつも笑ってたよね。

    何をしても何を言っても、どんなに傷つけても。

    君は笑っていたね。

    −−−憎らしいくらいの笑みでーーーーーーーーーーーーーー










  「桜の花言葉って知ってます?」
  「・・・何それ。そんなのあるんだ」
   興味なさげに相槌をうつ。
   今、持っているのは隣に座っているが淹れた緑茶だ。
  「私も小さいころに父様から聞いただけなんですけど・・・確か、”私を忘れないで”だったと思うんです」
  「私を忘れないで、ねぇ・・・。いーんじゃない?散っていく感じと合ってて。」
  「・・・・・・。」
   おどろいた表情のまま。が固まっていた。
  「・・・何。変だった?今の。・・・それとも」
   ずいっと一気に距離を縮める。
  「・・・てぇっ?!あっ、いえ、そのっ!」
   慌てふためく赤面の少女。

   ーーーなんて、ありふれた光景なんだろう。
   偽りの仮面をつけている僕。
   純真すぎる君。
   きみのそばにいればいるほど、僕は惨めになっていく。
   きみのそばに居たいと渇いた心が叫びだす。
   −−−どうすればいい?
   堂々巡りの想いだけが僕の胸を焦がしていく。
   おそらく、僕よりも遥かにきみを愛しているひともいるし、
   大切にしたい、と思うひとも居る。
   だけど、いや、だからこそ。
   君が不幸だったとしても奪っていくことができないんだ。
   −−−僕がいるから。
   ねぇ、知ってる?
   僕は君のために君をまもるんじゃ、ないよ。
   僕のために君をまもってるんだ。
   『君』がいなきゃ、『僕』じゃない。
   『僕じゃない誰かが『僕』になる。
   だから、僕のそばにいて・・・?




   「ねぇ、ちゃん・・・」
   ひゅう、ひゅうと浅い吐息が血と混じりあって口の端から漏れていた。
   「いや、もう、しゃべらないでください・・・・・!!」
   ぼろぼろと泣きながら声にならない声を上げる君。
   ・・・あぁ、違う。
   僕がみたいのは。
   「ね・・・、・・・・ちゃん」
   そっと、頬に指を重ねる。
   ・・・血が、付いちゃったな・・・。
   利き手だということもあって、の頬には赤い筋が数本のこっていた。
   「お、き・・たっさ」
   大粒の滴がぱたぱたと落ちてくる。
   身体の先が冷たくなっていくのがわかる。
   「笑って、くれない・・・の・・・?」
   「・・・ッッ!!」
   泣き笑いのような顔だった。
   走馬灯のように今までのことが走り抜ける。
   ・・・あぁ、いまごろになって・・・・
   「・・・ッ、・・・」
   「そ、総司さん」
   「君が、いたから・・・生きてこれた」
   刀でもなく、羅刹でもなくひととして。
   生きてこれた。
   だんだんと呼吸が浅くなっていく。
   吐く息も鉄に似た匂いをまとう。
「総司、さんっっ!!」
   の頬を伝う雫を受け止めようとした手は。
   涙を拭うことなく、力尽きていた。









      君をおいていく僕をゆるして。
      君を一人にしてしまう僕を。


      僕はいつまでも君の幸せを祈ってる。


      −−忘れないで。
      僕があの時、確かにきみを愛していたことを。
      忘れないで。永遠に。


      君の幸せを願いながらも。 
      君を手放すことが出来なかった。

      世界は矛盾に満ちている。








   ーーーねぇ、桜ってなんであんな色しているか、しってる?

      え、何でですか

      それはね、人の生き血をすっているからなんだって
      ・・・まるで、羅刹と同じだね。

      ・・・でも、花に罪はありませんよ?

      そうだね。                         −−−









   月光のなか、折り重なるようにして互いを庇いあう鬼の骸がふたつ。
   新月に流星がふたつ、流れていた。












                                      END









  後綴り   by  黒鴉

  お初にお目にかかります。黒鴉です。
  今回は影羽へ捧ぐということで、沖田さんをかかせてもらいました。

  拙いものになりましたが、黒鴉の沖田さんへの想いを黒鴉なりに綴ってみました。
  
  因みに作中での花言葉なのですがあれは、桜全般の花言葉です。

  影羽のサイト名が紫苑ということもあったので、花にちなんでつけました。
  あと、桜の色は都市伝説的なものを引用しました。

  最後に一言でも皆さんの心に残れば、幸いです。



  

  後綴り    by  影羽

  有難う、黒鴉!!
  不純物しか書かない彼女におねだりという名の脅しをかけたら、書いてくれました。
  本当に有難う〜〜。
  
  ま、悲恋というところにひっかかりますが。
  それでも、彼女の書き方は本当に好きな書き方なので。
  
  友人であり、大好きな書き手の一人だったりします。


  小物の使い方が上手いですよね。
  桜にきゅんとします。