双祈




星たちが逢瀬を重ねることができる夜。

 小さな二つの祈りが捧げられた。





 空に浮かぶきらきらとした帯、天の川。
 それが見える窓に片肘をつきながら、土方はほう、とため息をついた。
 それと同時に聞こえる密やかな足音が聞こえる。
 「・・・、・・・。」

 「歳三さん」

 呼びかけられ、後ろから身体に白い腕が回される。
 振り向かなくとも誰か、わかる。
 もう、当たり前となってしまった彼女の甘い香りが土方の鼻腔をくすぐった。
 「も、どこにいったのかって思いましたよ・・・?」
 「
 少し、かすれた声が先ほどの情事の面影を残していた。
 いきなり、ぎゅうっと腕に力が込められるのを感じ、土方は振り向いた。

 「どうした」
 「歳三さんが何処かに行かないように、です」
 「・・・お前。寝ぼけてんのか」
 「そんなこと、ありません・・・」


 しかし、の瞳はとろん、としていて今にも睫毛が伏せられてしまいそうだ。
 声をだんだん小さく、ゆったりとしたものになっている。
 まぁ、無理もないと己の所業を振り返りながら土方はため息をついた。
 それでも。
 
 の腕はしっかりと土方に絡み付いている。
 それに気づくと、土方は彼女の身体を抱きしめてやる。
 そっと、指を這わせ、やさしく。
 
 眠いのに無理しやがって、と土方からは苦笑が零れていた。
 けれど、土方の顔は本人は気づいていないかもしれないがとても、穏やかなものだった。


 「七夕、ですね」
 は土方の眺めていた方向に目をやる。
 「今年はきっと、織姫を彦星は会えましたね」
 「そう、だな」
 そっと、は微笑むとなにかを掴みたがるように手を空へひらひらと舞わせた。
 「これから、未来までずっと、歳三さんといっしょに居られますようにってお願い届いたかな・・・」
 幾度となく繰り返される言葉。
 互いに傷つけあい、惹かれていたのに手を取り合うことができなかった過去を思い出す。
 できることなら。
 土方だとて。
「歳三さんは?なんて、お願いしますか」

 土方は口を開きかけ、そしてとじる。
 代わりにの宙に舞っていた手を掴むとそのまま、に顔を近づけた。
 そのまま、重ねられる唇。
 くちゅり、という水音とともに土方の舌がの口腔に入り込む。
 そのまま、舌を辿られる。
 「・・・んぅ、んっ」
 突然の口付けには一瞬目を見開いた。
 だが、土方の首に腕をまわし、つたなく応える。

 「いつか、教えてやるよ」
 銀糸を引きながら、互いの唇が離れると土方は口元を月の形にかえる。
 悪戯っぽく微笑む土方には睨つける。
 「教えて、くれたっていいのに」
 「いつかな」
 「歳三さん、意地悪・・・」
 その、珍しい子供っぽい仕草をいとおしむように土方は再度、口づけた。





 

この日が来るたび、誓う。




 

 にこの願いを告げられるように土方は生に向かって足掻くだろう。
 そして、今がいとおしいから、今を大事にしよう。
 だから。
 それまではーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。



 星たちが寄り添いあうように。
 土方もを抱き、目を閉じた。



                                        END




後綴り

 

 七夕記念。
 凄い、遅れてすみませんでした。

 土方さん、初upがこれか。とある意味感慨深い影羽です。

 途中まで書いていたのを某七夕企画の短冊をみて、少し書き加えました。
 いっしょに見ていただければ面白いかも。

 土方さんルートのは凛とした感じをよく漂わせているけど。
 本当はこんな一面がたくさんあると思う。

 土方さんはED後、大人の余裕で恥ずかしいことをやってのける人だと信じてやまない・・・・!!




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